
大阪・関西万博は失敗なのか?期待と不安が交錯する現実に迫る
2025年に開催予定の「大阪・関西万博(正式名称:2025年日本国際博覧会)」。 かつて1970年に開催された大阪万博は、日本が高度経済成長を世界にアピールする一大イベントとして歴史に名を刻みました。
半世紀以上を経て再び日本で開催されるこの万博に、多くの人が希望を抱いていたのは事実です。しかし、開催まで1年を切った今、報道や世論では「建設費の増大」「工事の遅延」「国民の無関心」など、ネガティブな話題が目立ちます。
果たして大阪万博は「失敗」と言えるのでしょうか?それとも、まだ見ぬ成功の可能性を秘めた国家的プロジェクトなのでしょうか?
この記事では、万博の意義、現在抱える課題、そしてその未来までを、多角的に深掘りしていきます。

■ 大阪万博とは何か?今さら聞けない基本情報
まず、2025年の大阪万博とはどのようなイベントなのか、基本情報をおさらいしておきましょう。
- 正式名称:2025年日本国際博覧会(Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan)
- テーマ:「いのち輝く未来社会のデザイン」
- 開催期間:2025年4月13日〜10月13日(184日間)
- 会場:大阪市此花区・夢洲(人工島)
- 想定来場者数:約2,820万人
- 参加国数:150カ国以上(予定)
- 主催:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
- 総事業費:約2,350億円(国・大阪府市・経済界の共同負担)
1970年の大阪万博は6,400万人を超える来場者を記録し、日本の未来を世界に示す舞台となりました。2025年の万博も、それに匹敵する…あるいはそれ以上の役割を担うべきだという期待が集まっていたのです。
■ 万博に期待されていた"3つの未来"
万博に対して世間が抱いていたのは、単なる観光イベントではなく、未来への布石としての期待です。特に以下の3点に注目が集まっていました。
1. 技術革新の象徴としての万博
大阪万博は「未来社会の実験場」というサブテーマのもと、空飛ぶクルマや最先端のバイオ技術、ロボットによる接客、デジタルヘルスケア、仮想空間体験などが紹介される予定です。
これらは一見するとSFのように感じられるかもしれませんが、企業や大学、研究機関による真剣な実証実験の場でもあります。もしこれらが世界の注目を集めれば、日本は再び「技術大国」としての存在感を示せる可能性を秘めています。
2. インバウンド再興の起爆剤
長引くコロナ禍で落ち込んだ観光業界にとって、万博は救世主的存在です。関西圏はもちろん、東京、名古屋、福岡などからのアクセスも見込まれており、全国規模での観光復活が期待されます。
また、中国・韓国・東南アジアを中心とした海外からの旅行者誘致にも力が注がれており、「観光立国・日本」の再出発の場でもあります。
3. 都市開発との連動
夢洲は、万博終了後に統合型リゾート(IR:カジノを含む施設)の建設予定地でもあります。
これにより、万博は一過性のイベントではなく、都市開発のスタート地点としての意味も持っています。交通インフラ(地下鉄延伸、バス網の整備など)や、雇用創出、企業進出の促進など、多面的な波及効果が期待されていたのです。

■ それでも起きた“歯車の狂い”とは?
順風満帆に見えた万博ですが、次第に様々な"ほころび"が明るみに出てきました。ここからは、その実態を掘り下げていきます。
1. 建設費の膨張が止まらない
当初の予算見積もりでは1,250億円程度だった建設費は、現在2,350億円を超える見込みと報じられています。その要因は、建設資材の高騰、人手不足、設計変更、そして「大屋根リング」と呼ばれる巨大構造物の設計難航などです。
国民からは「また税金の無駄遣いか」「東京五輪の悪夢再来か」といった厳しい声も上がり、政治問題にまで発展してきています。
2. 外国パビリオンの建設遅延
150カ国以上の参加が予定されていますが、多くの国が「建設のめどが立たない」と表明。
外国建設業者のノウハウ不足、円安、建設基準の違いなどが障害となっており、最悪の場合は「パビリオンなし」で参加という事態すら起こりうるのです。
3. 地元の関心の薄さとPR不足
市民の間では「万博って結局誰のためのイベント?」「自分には関係ない」といった冷めた意見が少なくありません。
学校教育やメディア露出などで盛り上げようとする動きも見られますが、熱量が伴っていない印象は否めません。特に若年層の無関心は深刻で、「万博」という言葉自体にピンと来ていないという調査結果も。
4. 交通インフラとアクセス問題
夢洲は、現時点でアクセスが非常に限定的な人工島です。工事用道路やバス路線は仮設に近く、地下鉄中央線の延伸工事もギリギリのスケジュール。
会期中のアクセス混雑、災害時の避難経路問題など、安全性に関する不安も拭えません。
■ 世論はどう見ている? 肯定派 vs 否定派
万博をめぐる世間の声は二分されています。
肯定派の意見
- 「未来への投資。批判ばかりでは何も変わらない」
- 「これを機に大阪が変わるかもしれない。期待したい」
- 「次世代に希望を見せる貴重なイベントだ」
- 「世界から人が集まる舞台。批判より支援を」
否定派の意見
X(旧Twitter)や掲示板でも「#大阪万博いらない」というタグがトレンド入りするなど、冷ややかな声が目立ちます。
■ 世界の万博事情と比較してみる
万博は本来、国際的な技術・文化交流の場として開かれるものであり、経済効果よりも"精神的・文化的な価値"が重視される傾向があります。
たとえば、ドバイ万博(2020→2021年)はコロナ禍の中で延期されたものの、約2,400万人の来場者を集めました。
しかし運営費の回収は難しく、「開催国の威信」を示す以上の成果は残せなかったという声も。
つまり、万博は"経済的成功"を測るイベントではなく、国のアイデンティティを世界に示すための舞台という面もあるのです。
■ それでも開催する意義とは?
数多くの課題があるにもかかわらず、なぜ大阪万博を開催すべきなのか? それは、以下のような"根源的な価値"があるからです。
- "いのち"という普遍的なテーマを世界と共有できる
- SDGsや持続可能性といった地球的課題に対する議論の場になる
- 若者に夢を与える、未来志向のイベントになる
そして何より、コロナや不景気などで沈んだ社会に希望の灯をともす「象徴的な再スタート」となる可能性があるのです。

■ 結論:大阪万博はまだ“挑戦の途中段階”
現時点で、大阪万博は確かに準備の遅れや財政的問題を抱えており、「順調とは言い難い」状況にあります。しかしそれだけで「失敗」と結論づけるのは早計でしょう。
万博とは、開催後にその真価が問われるイベントです。
準備段階での混乱を乗り越え、終わった時に「やってよかった」と国民が思えるような経験にできるか。
そのためには、運営側の誠実な対応、メディアの正確な報道、そして私たち市民一人ひとりの"見守る力"が必要です。
大阪万博は、日本が未来にどう立ち向かうかの縮図とも言えるでしょう。
この一大イベントの成否は、単なる観光イベントの枠を超え、日本社会の方向性そのものを映す鏡になるのかもしれません。